スポーツ施策の新たな方向性を示す「第3期スポーツ基本計画」を解説!《後編》

スポーツ施策の新たな方向性を示す「第3期スポーツ基本計画」を解説!《後編》

皆さんは、スポーツ基本計画をご存じですか。スポーツ基本計画とは5年おきに改定され、文部科学大臣が定める今後のスポーツ施策の在り方を示す重要な指針です。この度、スポーツ庁では2026(令和8)年度まで運用されるスポーツ基本計画(第3期)を策定し、2022(令和4)年4月よりスタートしました。

新型コロナウイルスの感染拡大により変化したライフスタイル、2020東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を経て得たレガシーなど、現在の社会状況のなかでスポーツの価値を高めるべく「東京大会のレガシーの継承・発展に資する重点施策」、「新たな3つの視点」の2本柱が掲げられた施策内容となっています。デポルターレでは第3期スポーツ基本計画について前後編に分けて解説。
後編では「3つの視点」とは何かを説明します。

新たな「3つの視点」とは

新たな「3つの視点」とは:イメージ

これまでスポーツ庁では、多面にわたるスポーツの価値を高め、広く国民に伝えていくために、計画が目指す方向性をわかりやすく示す、すべての人々が、スポーツを「する」「みる」「ささえる」というさまざまな立場でスポーツに関わることで、下記の4つの目標の実現に向けて取り組んできました。

①スポーツで「人生」が変わる
②スポーツで「社会」を変える
③スポーツで「世界」とつながる
④スポーツで「未来」を創る

第3期スポーツ基本計画では上記を踏襲したうえで、国民が「する」「みる」「ささえる」ことを真に実現できる社会を目指すために、新たな「3つの視点」を掲げました。

①社会の変化や状況に応じて、既存の仕組みにとらわれずに柔軟に対応するというスポーツを「つくる/はぐくむ」という視点

②さまざまな立場・背景・特性を有した人・組織が「あつまり」、「ともに」活動し、「つながり」を感じながらスポーツに取り組める社会の実現を目指すという視点

③性別、年齢、障害の有無、経済的事情、地域事情等にかかわらず、すべての人がスポーツにアクセスできるような社会の実現・機運の醸成を目指すという視点

この3つの新たな視点ごとに、重点施策について取り組んでいくことが求められています。それぞれの視点について説明します。

《新たな視点①》スポーツを「つくる/はぐくむ」

《新たな視点①》スポーツを「つくる/はぐくむ」:イメージ

社会の変化や状況に応じて、既存の仕組みにとらわれずに柔軟に見直し、最適な手法・ルールを考えて作り出していきます。

■多様な主体が参画できるスポーツの機会創出
性別、年齢、障害の有無などに関係なく、多様な主体がスポーツを楽しむために、アーバンスポーツなどの新しいスポーツへの参画や、日常生活の中で気軽にできる運動やスポーツ・レクリエーションの実施、状況や環境の変化に応じた柔軟な実施方法やルールの変更・工夫を行うなど、必要な啓発活動や支援を行います。
■自主性・自律性を養う指導ができるスポーツ指導者の養成
次代を担うアスリートを育成する指導者には、選手自身が将来やスポーツキャリアを考え、その実現に向けて自主性・自立性を養うことを促していく指導が不可欠です。そうした優れた指導者の養成を目指し、各スポーツ団体の指導者養成の充実を支援します。
■スポーツ界におけるDXの導入
スポーツ界におけるDXの導入により、データを活用したトレーニングやスポーツ活動の効率化向上や最適化を図り、またスポーツに関する知見や機会を国民や社会に広く提供することが可能になります。スポーツを「する」、「みる」の観点においてもデジタル技術を活用し、新たなスポーツの価値やスポーツビジネスモデルの創出等を推進します。

《新たな視点②》「あつまり」、スポーツを「ともに」行い、「つながり」を感じる

《新たな視点②》「あつまり」、スポーツを「ともに」行い、「つながり」を感じる:イメージ

さまざまな立場・背景・特性を有した人・組織が集まり、ともに課題に対応し、つながりを感じてスポーツを行います。

■スポーツを通じた共生社会の実現
誰もが「する」「みる」「ささえる」ことを通じてスポーツの価値を享受できるように、様々な立場・状況の人が「あつまり」、「ともに」スポーツを楽しめる環境を構築し、スポーツを通じた共生社会の実現を図っていきます。
■スポーツ団体のガバナンス・経営力強化、関係団体等の連携・協力を通じたわが国のスポーツ体制の強化
スポーツ団体が自主的・自律的にガバナンスを強化し、持続可能な団体運営や団体間の連携・協力が行えるよう人材確保等の支援やネットワークの構築を行います。またスポーツ団体間のみならず地方公共団体、民間業者、医療機関などとの情報共有や連携も促し、スポーツ実施の促進にも取り組みます。
■スポーツを通じた国際交流
スポーツを通じた国・地域・人々のつながりを強めるため、スポーツ分野の政府間国際協力の推進や、地域間の相互理解に向けた人材交流の支援、国際交流を担う人材育成、日本のスポーツの魅力発信など、国際交流・協力を推進します。

《新たな視点③》スポーツに「誰もがアクセス」できる

《新たな視点③》スポーツに「誰もがアクセス」できる:イメージ

性別や年齢、障害、経済・地域事情等の違いによって、スポーツの取り組みに差が生じない社会を実現し、機運を醸成します。

■地域において、住民の誰もが気軽にスポーツに親しめる「場づくり」等の機会の提供
総合型地域スポーツクラブ等の体制強化・役割の拡大を通じて、住民のニーズに応え、地域社会の課題解決に資するスポーツ環境を構築するとともに、誰もがスポーツを行いやすいユニバーサルデザイン化の推進などにより、安全で持続可能な地域スポーツ環境の充実を図ります。
■アスリート育成パスウェイの構築およびスポーツ医・科学、情報等による支援の充実
オリ・パラ競技ともに、アスリートの発掘・育成・強化までを一貫して行うパスウェイの構築を進めるとともに、居住地域にかかわらず全国のアスリートがスポーツ医・科学、情報等のサポートを受けられるよう、地域の関係機関のネットワーク構築による連携強化、地域における専門人材育成等を推進します。
■本人が望まない理由でスポーツを途中で諦めることがないような継続的なアクセスの確保
スポーツに取り組む者が、本人が継続を希望するにもかかわらず、ケガ・障害や不適切な指導など本人が望まない理由でスポーツを親しむ機会を失ったり、制限されたりすることがないよう、継続的なスポーツの実施に向けて、スポーツを実施する者の心身の安全・安心の確保を図ります。

まとめ

新型コロナウイルス感染症の影響下にあって、生活や働き方などライフスタイルの変化が生じています。また通信・デジタル技術など情報化社会の進展・進歩は著しく、さまざまな視点や価値観を共有する多様性の尊重が求められています。今回の3つの新たな視点は変化する時代に合わせて、「スポーツの価値」を享受し、誰もがスポーツを身近に感じられる環境づくりへの指針となっています。デポルターレでは「第3期スポーツ基本計画」の指針を実践する取り組みや情報を引き続きお伝えしていきます。

動画へのリンク

●本記事は以下の資料を参照しています

スポーツ庁 - 第3期スポーツ基本計画

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