『日本型マルチスポーツ』環境の構築に向けてスタート!

『日本型マルチスポーツ』環境の構築に向けてスタート!

現在、スポーツ界が注目しているのが「マルチスポーツ」です。マルチスポーツとは、子供たちが複数のスポーツを同時期に行うことを指します。スポーツ庁は、子供たちのスポーツ活動のより一層の充実を図るために、特にジュニア期の子供たちを対象とした『日本型マルチスポーツ』環境の構築・充実に取り組んでいます。

マルチスポーツの意義

東京2020オリンピック・パラリンピック大会以降、国際競技大会や、海外プロスポーツリーグなど世界を舞台に活躍する日本人アスリートが増えました。そのアスリートたちの中にも、幼少期は現在の競技とは別に複数のスポーツを経験していた方がいます。日本陸上競技男子ハンマー投げ、アテネ2004オリンピック・パラリンピック大会の金メダリストである室伏長官も幼少期には、テニス、ゴルフ、水泳など複数スポーツを経験してきたアスリートの1人です。

マルチスポーツ環境の構築により、子供たちのスポーツ活動に一層の充実を図られることが期待されます。同時期に複数のスポーツを経験することは身体機能の向上やケガの防止だけではなく、複数の仲間(コミュニティへの所属)を通じて、子供自身の社会性や協調性などを育む教育的な意義もあります。また、子供たちが様々なスポーツを経験しながら自らの適性等を見極めたうえで本格的な競技活動に進んでいくことができるなどのメリットもあります。

こうしたマルチスポーツは、欧米では、ごく当たり前のこととなっており、例えば、アメリカでは部活動にシーズン制が導入されており、中高生年代の8割程度がマルチスポーツを実施していますが、日本では、中学生・高校生は一つの競技のみを行う場合が多く、地域にもマルチスポーツを経験できる環境はごく限られている状況です。

日本型マルチスポーツの構築に向けての取組

こうした状況を変えるべく、スポーツ庁は、2024(令和6)年度よりジュニア期の子供たちを対象に、わが国に適した『日本型マルチスポーツ』環境の構築を図るべく、新たな取組をスタートさせました。

具体的には、まず第一歩目の取組として、「地域における子供たちの多様なスポーツ機会創出支援事業」により、筑波大学に委託して以下の取組を進めています。

①マルチスポーツに関する国内外の先進的な取組や研究成果等の調査
②スポーツ団体等と連携したマルチスポーツ体験イベントの実施
③子供の自主学習向けのトレーニング動画等の作成

各国の有識者・キーパーソンによるマルチスポーツコンベンション開催

2024年11月7日、筑波大学 東京キャンパス文京校舎において、マルチスポーツコンベンション「日本のスポーツ革命が『いま、始まる』」が行われました。「日本が目指すべきマルチスポーツ環境の姿とは?」をテーマに、国内外のマルチスポーツに関する政策や先進的な取組事例についての紹介をはじめ、各国の有識者等を交えて日本型マルチスポーツ環境の構築に向けた課題や解決方法について討論されました。会場にはスポーツや教育の関係者などおよそ200人が訪れ、マルチスポーツ環境への注目の高さが伝わってきました。

会場では約200人が訪れて聴講した:イメージ(写真)会場では約200人が訪れて聴講した

マルチスポーツコンベンション:イメージ写真提供:筑波大学体育スポーツ局

コンベンションで登壇されたのは以下の方々です(登壇順/敬称略)。

  • 室伏 広治(スポーツ庁⻑官)
  • Andy Rogers(Sport New Zealand デベロップメントマネージャー)[ニュージーランド]
  • Steven Rynne(The University of Queensland 准教授)[オーストラリア]
  • 谷口 輝世子(スポーツジャーナリスト)[アメリカ在住]
  • Lander Hernández Simal(University of Deusto 講師)[スペイン]
  • 小澤 一郎(スポーツジャーナリスト)[スペイン在住]
  • 大山 高(筑波大学体育系教授)

室伏長官はハンマー投げのほか、いくつものスポーツを経験した自身の子供時代の話から、若い時から多くの“スポーツを体験できる機会”を創出することや、“いろいろなスポーツを楽しむ”ため、年代に合わせて身体機能やアスレティックなアビリティを高めることの重要性について語りました。

室伏スポーツ庁長官:イメージ

ほかの登壇者からは、ニュージーランド、オーストラリア、アメリカ、スペイン、それぞれの国での事例が紹介されました。アメリカの学校ではスポーツはシーズン制で分かれ、州毎に規定が設けられており、さまざまな競技を行う仕組みが整っているという話、スペイン・バスク州では教育の一環としてスポーツ活動が取り入れられおり、12歳まで特定のスポーツでの選手登録は禁じられ、マルチスポーツが推奨されているなどの話が紹介されました。

登壇者が共通して語ったことは、マルチスポーツは運動能力の向上が目的ではなく、“スポーツや体を動かすことが好きになる”こと、「ウェルビーング」の向上という観点でした。多様なニーズに合わせた誰もがスポーツを楽しめる環境の大切さが示されました。

聴講者からのアンケートでは、講演内容に多くの方が満足と回答し、「マルチスポーツはあくまで手段であること。スポーツに関する施策への理解を多くの方にしてもらうためには行政含めた大きなプロジェクトが必要であること」「いずれの国もスポーツは文化として根ざしているものの、それぞれの国によって、スポーツというものを通して実現しようとすることが異なっていたり、スポーツの発展が何を指すのかが異なっているというのは面白い気づきでした」などの意見が寄せられました。

まとめ

日本でもマルチスポーツ環境の構築に向けて本格的にスタートが切られました。これから調査研究や各地域における実践を重ねながら、日本の実情にマッチした『日本型マルチスポーツ』環境が構築できるよう、スポーツ庁が先頭に立った取組を進めてまいります。未来のアスリート誕生、継続してスポーツを楽しめる環境、スポーツを中心としたコミュニティ創出、さまざまな可能性を秘めているマルチスポーツ環境の構築に向けて、今後もスポーツ庁は取り組んでまいります。

●本記事は以下の資料を参照しています

スポーツ庁 - マルチスポーツについて(2024-11-01閲覧)
筑波大学 体育スポーツ局 - 【11月7日開催】マルチスポーツコンベンションー日本のスポーツ改革が「いま、始まる」(2024-11-01閲覧)

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