学校が主導する部活動改革

体育館とバレーボール

これまで『DEPORTARE』の運動部活動イノベーションシリーズでお伝えしてきたように、近年の少子化とともに、子どもたちがスポーツをする環境として重要な存在だった「運動部活動」の存続が難しい状況となっています。いま、そうした事態を打開するために、学校の部活動に代わる地域の力を借りた受け皿づくりが注目されています。

部活動の受け皿となっているものの多くは「地域」が主体となっています。しかし、今回、ご紹介する茎崎中学校(茨城県つくば市)の「茎崎地区文化・スポーツクラブ(KCSC)」は、「学校」主導という数少ないケース。学校長の指揮のもと、小さな学校でも出来る新しい部活動のカタチを目指して実践しています。

スポーツ庁 - 「部活=学校」である必要はない!?地域が主体となって子供たちのニーズに応える 「総合型地域スポーツクラブ」視察レポート
https://sports.go.jp/tag/school/local-sport-club.html

学校が主導する総合型地域スポーツクラブ「茎崎地区文化・スポーツクラブ(KCSC)」の活動の様子を動画でチェック!

現在、少子化によって全国的に1つの学校で部活動の練習や大会に参加するのが難しい状況となり、部活動の統廃合が進んでいます。

今回、取材した茨城県では部活動の運営工夫改善事業として、人数の少ない部活動を拠点となる学校に集めた「拠点校部活動」、バスケットボールとハンドボールなど別競技を兼ねる校内合同部活動や部活動の時間を作れるように曜日選択制授業 を実施する「生徒のニーズに応じた部活動」、クラブチームとの融合で活動を行う「地域支援体制」の三本柱を掲げて、各学校はその方針に則った部活動運営に取り組んでいます。

そのなかで、部活動とクラブの融合という形で生徒のスポーツニーズに対応している「茎崎地区文化・スポーツクラブ」が注目されています。

茨城県教育庁学校教育部保健体育課の塚田勝之指導主事はKCSCに対し、こうコメントしています。
「KCSCは、部活動のない日に、受益者負担で専門家のスタッフによる効率的で細やかな指導を行っていて、子どもたちも生き生きと練習に取り組んでいます。いま運動部活動が地域クラブチームに移行していくなかで、この取り組みが県内に広がればいい」

茨城県つくば市南端に位置する小中一貫校「つくば市立茎崎中学校(生徒198人)」では、人口が減少する地域の小規模校として部活動の存続問題を抱えていました。そこで同校の八重樫通校長は市内有志の校長と相談しながら、問題解決に向けた試みとして学校主導の「部活動改革」を立案。

スポーツ庁の示した『運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン』に記される「総合型地域スポーツクラブ等との連携や地域のスポーツ指導者、施設の活用など、地域社会全体が連携、協働した取組も望まれます」を実践すべく、2018年11月、部活動支援のための市民団体「茎崎地区文化・スポーツクラブ(以下、KCSCと表記)」を立ち上げました。

KCSCは、バレーボール、ハンドボール、ソフトテニス、卓球、サッカーの運動部活動と、文化クラブの吹奏楽の計6つ。学校の部活動は平日の週3日(火、木、金曜日)に限定し、活動日以外を「KCSC」に学校施設を開放して活動を実施。事務局業務は、つくばフットボールクラブに委託し、指導者を統括。バレーボールには地元クラブチーム「つくばユナイテッド Sun GAIA」の選手、ハンドボールには「つくばハンドボールクラブ」の指導者らが質の高い指導を行っています。

クラブに所属する生徒たちは、真剣に、そして楽しそうに練習に取り組んでおり、指導内容に満足しながらスポーツを行っている姿が、この動画には映し出されています。指導の成果は実績にも出ており、卓球クラブ員が新人戦でつくば市3位となり、ハンドボール部は、つくば市の新人戦で優勝、県南大会で準優勝、県大会では3位の成績を残しています。

KCSCでの活動の様子1

KCSCでの活動の様子2

部活動改革には多くの問題も存在するが、覚悟をもって取り組む

「部活動改革」に乗り出した八重樫通校長

八重樫通校長が自ら「部活動改革」に乗り出した理由は「生徒一人一人の『やりたい!』に応える」「先生が、明日も元気に生徒の前に立てる」の2つ。

「本校は、一昨年、部員が集まらずに野球部が廃部、昨年はサッカー部の新入生入部ゼロという状態で、部活動運営は限界。今後、小規模校で団体競技を継続し、強化することは難しい状況です。部活動がなくなることは子どもや地域にとってもマイナス。また部活動を支えていた教職員の職場環境改善のためにも、学校が主導して地域と民間が協働して部活動改革を行う必要があります。待っていても誰もやってくれるわけではないので自分でやろうと。地域や保護者の理解を得るためにも、すべて責任をとる覚悟でKCSCを立ち上げました」

また、KCSCのような地方の小さな学校が取り組んでいる姿を見て、ほかの学校にも波及して欲しいと語ります。

活動費をクラウドファンディングで募集

KCSCの活動費について話す八重樫通校長

スタート間もないKCSCには課題や問題点も多くあります。クラブの活動費は受益者負担が基本で、現在、クラブに所属する生徒から1500円の月謝を徴収。それでもすべての活動費を賄っているわけではなく、つくば市からの事業補助金を活用して活動を行っていますが、補助金の期間は来年度まで。

「生徒の月謝を1500円から上げることはしたくない」と、八重樫校長は、スポンサーを募り、クラウドファンディングを立ち上げます。

「私はクラウドファンディングなんて知らなかったし、いまは支援者を増やすためにSNSを使って活動報告を随時行っているところです。KCSCを継続させるため運営資金を確保するまで責任をもってやっていこうと思います」

クラウドファンディングは目標金額1,000,000円を上回る支援金額が集まった。

部活動改革が「市教育委員会」主導で行われる自治体も

今回のKCSC以外にも、部活動改革の中には「市教育委員会」主導で部活動の存続に取り組む自治体もあります。

北海道士別市教育委員会では2019年度から、所属する部活が廃部になった場合、別の中学校の同じ部に入部できる「拠点校方式」を導入。生徒が競技を続ける方法の一つとして注目されています。

神戸市教育委員会では、2008年から進学した中学校に希望する運動部がない生徒に他校の団体競技の部活動に参加できるようにする部活動維持の取り組みを行っています。

八王子市でも、市内の公立中学校に通う中学生に向けて、新しい部活動の在り方を創造する方策の一つとして「拠点校方式による部活動」および「合同部活動方式による部活動」を実施しています。

今後、希望生徒はいるが部活動がない、部員数が少なく充分な練習ができない、専門的に指導できる顧問がいない、など隣接する学校同士で部活動を行う「合同部活動方式」も増加していくのではないでしょうか。

まとめ

今回紹介したKCSCは、生徒たちの「小さな学校だって運動したい、演奏したい」という声に応え、学校が主導し、地域と民間が協働で取り組んだケース。地方の小規模校でもこのような取り組みが可能だということを示せたのではないでしょうか。

「まだ手探りな状態ですが、今後、KCSCのような動きがもっと広がっていけば嬉しい」と八重樫校長のコメントの通り、学校主導の部活動改革には可能性がありそうです。ぜひ参考にしてみてはいかがでしょう。

●本記事は以下の資料を参照しています

スポーツ庁 - 「部活=学校」である必要はない!?地域が主体となって子供たちのニーズに応える 「総合型地域スポーツクラブ」視察レポート(2020-03-01閲覧)
茎崎学園 つくば市立茎崎中学校(2020-03-01閲覧)
クラウドファンディング READYFOR : 「小さな学校だって文化・スポーツ活動がしたい!」を実現する(2020-03-01閲覧)
文部科学省 - 運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン(2020-03-01閲覧)
公益財団法人 日本スポーツ協会情報誌「Sport Japan」2019年11・12月号(Vol.46)

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