「痩せていれば病気にならない」は誤解!? 女性の大敵「痩せ」「運動不足」のリスクと解決策【後編】
女性は特に年齢やライフステージによって身体が変化するため、それに伴って特有の健康問題が起こることがあります。若年期の低代謝や疲労骨折、妊娠・出産による排泄障害、更年期など、その時期や種類はさまざま。しかし、こうした症状は運動によって予防・改善できます。
スポーツ庁では、学生や仕事が忙しい人、子育て期などのさまざまなライフステージに立つ女性の声をヒアリング。世代に合わせた運動メニューを提供することであらゆる不調を改善できないか模索しています。女性の健康とスポーツに関する話題、後編となる今回はスポーツ庁が推奨する簡単な運動プログラムとその効果についてご紹介します。
今ある生活に運動を組込む「Myスポーツプログラム」
スポーツ庁の調査では、特に20~40代女性のスポーツ実施率が低いことがわかっています。その世代に多いのは、「仕事や子育てが忙しく、運動に時間を割くことができない」といった声。
特に子供をもつ女性は「できるだけ長く子供と一緒に過ごしたい」と願う人がほとんどで、ジムでトレーニングをしたり外でウォーキングやランニングをしたりと、子供と離れて自分だけの時間をもつことに罪悪感を覚えるケースもあると言います。
そこでスポーツ庁は「Myスポーツプログラム」と題し、こうした女性たちを対象とした運動プログラムを提案しています。同プログラムの特徴は、わざわざ運動の時間を捻出するのではなく、今ある生活のなかに〝ちょっとした″運動を組込む形で取入れられることです。
“スポーツ”というと競技的なイメージが強いと感じる人もいるかもしれませんが、自分だけの自由な時間をもちにくい20~40代女性だからこそ場所や時間を選ばず、特別な準備も必要ないエクササイズを考案しました。さらに、体力に自信のない人でもできるもの、子供と一緒に取組めるものなど、女性のニーズを網羅する内容となっています。子供と一緒に取組めるものでは、子供をお腹に乗せた腹筋トレーニングや子供の足を自分の足の甲に乗せて行う足上げなどがおすすめです。
仕事が忙しい人は、通勤で一駅歩くことを習慣づけたり意識的に階段を利用したりしてみましょう。また、デスクワーク中心の人はデスクに座ったまま取組める背中のストレッチや、肩や首のトレーニングがおすすめです。そのほか、移動中や入浴中、テレビを見ながらできる運動などが紹介されており、その種類は多岐にわたります。
個々の生活に応じた運動を選択すると8割が「続けられる」と回答
スポーツ庁では昨年、20~40代の女性計15人に集まってもらい、年代別にグループを作ってグループインタビューとワークショップを実施しました。「Myスポーツプログラム」について説明した後、それぞれの典型的な1日を振り返って無理なく実施できそうなメニューを選択してもらったのです。
たとえば、フルタイムで働く未婚の20代女性は、主に通勤中にできるメニューや仕事からの帰宅後に寝転がったまま行えるメニューを選択。身体のことを考えて、こりの解消や姿勢改善といった効果が期待できるものを選んでいました。また、子供をもつ30代女性は、身体への効果よりも子供と一緒に取組めるかどうか、自分の体力でもできるかどうかを重視。家事の合間にできたり子供と一緒にできたりするメニューを選択しました。
このように、それぞれが自分のライフスタイルや体力に合わせてメニューを選び、実際の生活で実践してもらった結果、その後の調査で約8割の人が運動を継続していることがわかりました。
実際に体験した人から、具体的に以下のような声が上がっています。
- 「わざわざ外に出て運動をしなくても、十分な運動ができることがわかりました」
- 「運動が苦手な自分は運動を習慣づけることは難しいですが、普段の生活に取入れやすいちょっとした運動なら習慣にしやすく楽しいです」
- 「身体がポカポカするので、冷え性の自分にはとてもありがたいです」
やはり、仕事で疲れて帰ってきたときや子供の面倒を見なくてはならないときにジムやフィットネスクラブに行くことは考えられないものの、通勤や家事、育児といった生活をしながら運動を取入れられるため継続につながっているそうです。「ながら」でできる運動こそが、継続の秘訣と言えるでしょう。
「JK」にも好評!みんなでできる楽しい運動
そして、今度はこの取組を女子高生にあてはめてみました。福井県鯖江市役所には、市内の女子高生が代表で活動する「JK課」なるものが設置されています。同課に所属する現役女子高生17名に「My運動・スポーツプログラム」を説明し、その場で実践してもらったのです。
集まったなかには運動が好きな子も嫌いな子もいましたが、スポーツメニューはにぎやかかつ楽しく行われました。なかでも2人組になって行うメニューは非常に盛り上がり、「仲間と一緒に楽しめる」要素が、女子高生には好まれることがわかりました。
実施後の感想を聞くと、「道具を準備するのは面倒」「寝たままできるものや気持ちいいものがよい」といった意見や、「フルーツバスケットで待っている間にヨガのポーズをするのはどうか」など、既存のゲームに工夫を加えて運動の要素を増やす、まさに女子高生ならではのアイデアも飛び交いました。やはり、高校生世代にも「ながら運動」や手軽な運動が好まれており、現在の生活にプラスαで運動を組込むことは効果的と言えそうです。
やってみよう! Myスポーツプログラムの例
ではここで実際のスポーツメニューをいくつか紹介します。オフィスの隙間時間や子供と過ごす時間の中で、皆さんもぜひ取組んでみてください。
オフィスでできる「背中のストレッチ(わしのポーズ)」
- 座位で足を肩幅に開きつま先を広げる。
- 左手を右の肩に置く(指先が肩甲骨に届く位置)。
- 右腕を左肘の下を通して肩から手を離し、顔の前で手の甲を合わせるように腕を絡める。
- 上体を前に倒し、肘を体から離すようにして肩甲骨を広げ、背中の筋肉を伸ばす。このポーズを30秒キープ。反対も同様に行う。1日に2~3回行うと効果的。
【ポイント】できるだけ背中を丸め、手首が肘よりも下がるようにする。
3~6歳の子供と一緒にできる「足腰のトレーニング(足上げ)」
- 子供の足を自分の足の甲の上に乗せる。
- バランスをとりながら片足を上げる。
- 足を戻す。
- 逆の足でも同じようにして、バランスをとりながら片足を上げる。これを交互に10セット行う。
【ポイント】子供がしがみついてくることにより負荷がかかり、よいコミュニケーショントレーディングになる。ただし、子供の体重に合わせて、無理のないよう回数を調節すること。
まとめ
幅広い世代で女性の運動不足が問題視されていますが、今回の調査でわかったのは、今ある生活に運動を組み込む「ながら運動」であれば、どの世代にも受け入れられやすいということです。仕事や家族との時間を大切にしながら身体を動かす機会を確保する「スポーツ・イン・ライフ」を実現することが、心身ともに健やかな人生を送るための第一歩と言えそうです。
「Myスポーツプログラム」を参考に、生活のなかに運動を取入れることによって、現在の生活を変えることなく、より健康的な日々を過ごしてみてはいかがでしょうか。
●本記事は以下のスポーツ庁発表の資料を参照しています
スポーツ庁 - 平成30年度女性スポーツ推進事業「事業報告書」「Myスポーツプログラム」等
スポーツ庁 - 平成30年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」について(PDF)(2019-03-01閲覧)
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