コロナ時代の新たなチャレンジ!デジタルを活用した武道ツーリズムの最前線に迫る

コロナ時代の新たなチャレンジ!デジタルを活用した武道ツーリズムの最前線に迫る

スポーツ庁では、スポーツと観光を融合させた「スポーツツーリズム」を通じて、幅広い関連産業の活性化、交流人口拡大による地域・経済の活性化を推進しています。新型コロナウイルスの感染拡大により、地域での活動は縮小や変更を余儀なくされていますが、ポストコロナに向け、感染予防策と両立しながら国内旅行需要を喚起しつつ、将来的なインバウンドの地方誘客に繋がる取り組みを進めていく必要があります。

今年度のスポーツ庁事業において、日本発祥で海外からの関心も高い「武道」を活用したスポーツツーリズムコンテンツを創出するためのモデル事業を実施。そのなかから、「デジタルを活用した武道ツーリズム」の取り組みを紹介します。

武道ツーリズムとは

「武道ツーリズム」とは、武道や武術の見学、観戦、実技体験、施設見学等、発祥の地である日本でしか体験できない、スポーツと文化(伝統文化・精神文化)が融合した、希少性の高いツーリズムです。

スポーツ庁は、2016年より文化庁、観光庁と連携し、スポーツと日本の文化芸術資源を融合させた「スポーツ文化ツーリズム」を推進しています。2017年に、訪日外国人上位7ヶ国・地域へのマーケティング調査を実施したところ、「武道」「大相撲」は各国で「みるスポーツ」としての意向が高いことがわかりました。特に、武道は海外でも愛好者が多く、受入体制やコンテンツを整備することで、海外の愛好者・日本文化関心層に対して、発祥地である日本への関心・訪日意欲を喚起することができるという結果を得ることができました。
それを受け、2018年3月に策定されたスポーツツーリズム需要拡大戦略では、新規重点テーマのひとつとして武道ツーリズムが設定され、需要喚起・定着化を図るために推進しています。

今年度、スポーツ庁が実施する「スポーツによるグローバルコンテンツ創出事業」では、武道ツーリズムに係る取り組みの3事業者を含む12事業者へ委託し、モデル事業の実施・検証等と磨き上げを行ってきました。今回は、そのなかから「デジタルを活用した武道ツーリズム」のコンテンツ創出に取り組む事業者の取り組み概要について紹介します。

※<参考>今年度武道ツーリズムに取り組む事業者の概要

1.沖縄観光コンベンションビューローの取り組み
沖縄県には、従来海外から空手を目的とした沖縄への来訪者が一定数存在しましたが、主にはコア層による道場での鍛錬や大会への参加など、その活動範囲や地域への波及効果は限定的でした。そこで、本事業を活用し、地域資源と空手が融合した観光サービスを提供する「ツーリズム」を確立し、交流人口の拡大・幅広い関連産業の活性化・関連消費の拡大などの波及効果を通じて地域活性化を目指します。
2.大阪体育大学の取り組み
大学がもつ「剣道」「なぎなた」に関する人材、知見、競技団体や地域とのネットワークを活用し、新たな体験学習型観光コンテンツを創出。グローバルコンテンツとして磨き上げることで、大阪・関西での新たな武道ツーリズムの推進に取り組みます。なお、本事業は5年間で取り組む中期的な事業を予定しており、2021年度はその初年度となります。

デジタルを活用した武道ツーリズムとその成果

接触の多い武道では特に、コロナ禍での稽古・試合の実施が難しくなった部分が多くあります。そこで、各競技のオンライン稽古の実施や、コロナ収束後の訪日集客施策の企画・運営をすることで、武道業界全体の活性化を図るのが、ブランドゥ・ジャパンが行うデジタルを活用した武道ツーリズムです。

このたび、各武道の多様なニーズに応えられるよう、通常稽古のオンライン支援だけでなく、下記の通り、多様な形でデジタル支援を行いました。

柔道

1/5と1/7の計2回、オリンピアンの中村美里選手(2008年北京オリンピック・2016年リオオリンピック銅メダリスト,世界選手権優勝3回)、講道館七段の南保先生や四段の秋山先生が指導を担当し、ブータンの子どもや青年40名を対象にオンライン稽古を実施。ブータンでは日本政府の支援で建てられた柔道場が完成し2021年10月にオンライン開所式が行われたばかりでした。 この道場で本事業と講道館・全柔連が連携し国際交流の一助となったことは本事業にとっても大きな成果です。また、本取り組みは武道の聖地である武道館が発行する月刊武道にも取り上げられました。これは、目標でもある「武道業界全体でのオンライン活用の促進」に少なからず寄与したと考えています。

柔道:イメージ

合気道

コロナ下における海外門下生との関係強化を目的に、北米エリアとロシアエリア向けに2回オンラインセミナーを実施しました。1/16北米エリアでは115名が参加、1/22ロシアエリアでも179名に参加頂きました。2回とも参加者満足度が非常に高く、特に2回目のロシアエリア向けでは、5点満点アンケートで参加満足度4.85点、本部道場への訪問意向4.80点との高い評価を得ることができ、オンライン稽古の実施が海外門下生との関係強化と、アフターコロナにおける本部道場への訪問意向の向上に繋がることが分かりました。

合気道:イメージ

剣道

10/10(15か国)と1/16(オーストラリア)対象に実施。1/16はコア層に対して共 有性が高い「攻め・溜め・合氣」「昇段審査への心構え」等を「座学+技術指導」の形で実施し、全世界でもベクトルを合わせ易い内容と感じました。 「剣道イノベーション研究所」として、早期(コロナ禍以前)からの取り組みにより既に確立している、コア層に向けたオンライン稽古の仕組みを使って、今後ライト層の誘客にも大きく活用できるものと感じました。

剣道:イメージ

古武道

収益化に向けた新施策として、座学+稽古の形で1/29に実施し、海外門下生70名が参加しました。座学の評価が非常に高く、5点満点アンケートで満足度4.83点となり、新たな収益コンテンツとして座学の可能性を見いだすことができました。また、今回のアンケート結果を踏まえてコロナ収束後には、オンライン施策と連動させた形で沖縄でセミナーを行う予定です。

古武道:イメージ

自走化に向けた展開、公益財団法人との連携

今回の取り組みは、道場との連携が必須でしたが、公益財団法人は営利を目的としていないため、事業の目的である「新たな収益コンテンツに発展させていく」活動での連携が難しい競技もありました。また、各武道でデジタル施策へのニーズが異なるため、当初予定していた「収益化」だけでは、支援施策として不足していたという課題もあります。

しかし、今回の実施アンケートにより、武道家は他の武道体験にも興味があるという結果を得ることができ、新たな収益コンテンツに発展・展開しうる可能性が見えました。 また、そのデータを活用した諸武道でのオンライン施策を推進し、オンライン施策の有効性を立証できるようこのような取り組みを継続していきたいです。

一方で、デジタル施策のニーズは各武道・各道場で異なるものの、本来はデジタルよりもリアルという考えは同じでした。ポストコロナにおいては、今回連携した道場や広域な海外ネットワークを有する公益法人と引き続き関係を強化し、関係事業者等と連携して武道ツーリズムに繋げたいと考えています。

●本記事は以下の資料を参照しています

令和3年度「スポーツによる地域の価値向上プロジェクト」の公募について(2022-02-01閲覧)

関連記事
コロナ禍から反転攻勢に向けた「武道ツーリズム」
訪日外国人が注目! 日本でしか体験できない「武道ツーリズム」の現場をレポート

:前へ

氷都の地域性を活かしながら多目的性を高めた『FLAT HACHINOHE』

次へ:

“楽しむ”ことを大切にする黄金井倶楽部のボッチャ教室