スポーツツーリズムモデル事業による新たな価値創出〜2022年度モデル事業紹介

スポーツツーリズムモデル事業による新たな価値創出〜2022年度モデル事業紹介

スポーツ体験や観戦をアクティブに楽しみながら各地域の魅力を満喫する「スポーツツーリズム」。スポーツ庁では、スポーツツーリズムを通じて、幅広い関連産業の活性化、交流人口拡大による地域・経済の活性化を推進しています。新型コロナウイルスの感染拡大により、地域での活動は縮小や変更を余儀なくされていますが、ポストコロナに向け、感染予防策と両立しながら国内旅行需要を喚起しつつ、将来的なインバウンドの地方誘客に繋がる取り組みを進めていく必要があります。

今年度のスポーツ庁事業において、地域スポーツ資源を活用した国内外から選ばれる観光コンテンツの創出のため、「武道ツーリズム」「アウトドアスポーツツーリズム」「スノースポーツツーリズム」「アーバンスポーツツーリズム」の4つのテーマでモデル事業を実施。そのなかから「武道」と「アーバンスポーツ」の取り組みをご紹介します。

“国生みの地”淡路島と空手によるツーリズム

空手や剣道など日本発祥の武道と歴史・文化などの地域が保有する観光資源を組み合わせた、日本でしか体験することのできない希少価値の高いスポーツツーリズムが武道ツーリズムです。今回、武道ツーリズムをテーマにした事業「日本誕生の地で、日本人の精神世界に触れる特別な空手体験事業」の取り組みをご紹介します。

本事業は兵庫県淡路島を中心とした「空手×自然×文化資源」がテーマのスポーツツーリズムです。

①淡路島が持つ資源と「空手」を掛け合わせ、「ここでしかできない特別な空手体験」を提供すること。

②武道を通じて淡路島の魅力を世界に伝え、地域資源の新たな発見・再発見を促すこと。この2点を通して、「新たな空手への興味・関心層の創出」と、淡路島への「インバウンド誘致」の戦略的展開と経済効果の促進を図ります。

取り組みの概要

今回の主な取り組みは、「インフルエンサーによる情報発信」、「モニターツアーの実施」、「観光事業者向けセミナーの実施」の3つです。

●インフルエンサーによる情報発信
豊富な観光資源を保有しているものの、まだ世界的な知名度の高くない淡路島をアピールするため、世間や人の思考・行動に大きな影響を与えるインフルエンサー4名を招聘し、空手体験や淡路島が持つ自然の魅力などを、SNSを通じて発信。

●モニターツアーの実施
台湾・欧米国籍の一般参加者4名ずつ計8名が参加。加えて、旅行事業者(専門家)2名を招聘して、外国人からの視点、専門家からのフィードバックを収集。コンテンツのブラッシュアップに活かしました。

●観光事業者向けセミナーの実施
インバウンドの受け入れ体制を整えるべく観光事業者向けにセミナーを開催。外国人観光客受け入れに向けたコンテンツの造成、集客、販売に関しての情報発信を行いました。

“国生みの地”淡路島と空手によるツーリズム:イメージ

モデル事業を通じて得られた効果や課題

四方を自然に囲まれた淡路島ならびに禅坊靖寧は、空手の精神性である“一切の邪念を捨て、己と向き合い、心と体のつながりを発見する”状態に身を置く環境として最適といえるものでした。淡路島現地の人との出会いや対話を通して日本人の持つ精神性に触れ、“国生みの地”である淡路島、日本の魅力が外国人観光客に伝わりました。
SNSを通じての情報発信では最大900万回再生を記録するなど、外国人にとって空手および淡路島にはまだまだ潜在的な魅力があることがわかりました。
今後は「情報発信」「多言語対応」などの課題に加え、アクセスや人員不足などの新たな改善点も踏まえ、次年度以降に取り組んでいきます。

横須賀市とアーバンスポーツ(BMX)によるツーリズム

スケートボードやBMXなど若者や若年層を中心に人気を集めるアーバンスポーツ。東京2020大会後のレガシー創出と新たな魅力の発掘が期待されるのがアーバンスポーツツーリズムです。今回、アーバンスポーツツーリズムをテーマにした事業「『BMXの街横須賀』で実施するアーバンスポーツを活用したスポーツツーリズムコンテンツ創出事業」の取り組みをご紹介します。

全国自治体で初めてBMX大会用パークを常設するなど、BMX競技の推進を行う横須賀市が、「アーバンスポーツ=横須賀市」の認知度向上・定着と、スポーツを通じたまちづくりを推進するスポーツツーリズムです。

取り組みの概要

今回の主な取り組みでは、横須賀市と全日本フリースタイルBMX連盟が開催するアーバンスポーツの祭典「JapanCup Yokosuka」を中心に、市内各地でアーバンスポーツを「知る」「見る」「する」を提供するコンテンツを展開しました。

具体的には、①JapanCupでのセクションを利用した取り組み、②市内の小学校へ訪問し、講演会・デモンストレーションを実施、③イベント会場での日帰り体験会の実施、プロモーション動画の作成など、地元・横須賀の市民・企業・商店などの協力を得ながら、アーバンスポーツによる地域活性化を図るために行われました。

横須賀市とアーバンスポーツ(BMX)によるツーリズム:イメージ

モデル事業を通じて得られた効果や課題

まだ「横須賀=アーバンスポーツ(BMX)」の認知度は低いものの、体験会参加者のアンケートでは「楽しかった」と回答した人は90%を超え、さらに認知度向上に取り組めば、アーバンスポーツによる交流人口増加の可能性は高いことを示唆させる結果といえます。
今後も事業を継続し、将来的には一般の人が気軽に参加できるアーバンスポーツの市民大会やイベントの開催、地元との連携のさらなる強化を目指していきます。

まとめ

今回ご紹介したモデル事業のように、スポーツツーリズムは、スポーツを通じてあらたな観光資源の創出、地域資源の掘り起こしを促し、地方誘客による交流人口の拡大、幅広い関連産業の活性化や関連消費の拡大など地域活性化に大きく寄与するポテンシャルを持っています。スポーツ庁では、第3期スポーツ基本計画で全国各地が「スポーツによる地方創生、まちづくり」に取り組み、それらを将来にわたって継続させ、各地に定着させるよう、促進することを掲げていますので、スポーツツーリズムに興味のある自治体やスポーツ団体は、ぜひ検討してみてください。

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●本記事は以下の資料を参照しています

JAPAN SPORT TOURISMホームページ(2023-02-01閲覧)

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