これからの女性スポーツについて考えよう~全ての人がスポーツにアクセスできる社会の実現に向けて~【後編】

これからの女性スポーツについて考える~全ての人がスポーツにアクセスできる社会の実現に向けて~【後編】

2022年3月に第3期スポーツ基本計画が策定され、約一年が経とうとしています。ここからは政策の実現に向けた国内の取り組みについて、具体的に紹介していきます。

誰もがスポーツに参加しやすい環境づくり

スポーツ庁では、性別、年齢、障害の有無に関係なく、多くの人にスポーツを「する」機会をもってもらうための普及啓発・環境整備に取り組んでいます。例えば、子どもと一緒に運動できる地域でのプログラムや、カフェ・名所巡りといったウォーキングイベントなど、自治体や企業等の取り組みを支援しています。また、スポーツ実施に消極的な女性が「やってみよう」と思えるような「手軽にできるスポーツメニュー」などをスポーツ庁のウェブサイトで紹介しています。

女性のスポーツ参加サポートページ
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop11/list/jsa_00040.html

適度に食べて、適度に運動する女性は、健康面からみて理想的です。しかし、日本では女性の「痩せ」が大きな課題となっています。特に、骨量は20歳前後でピークを迎え、加齢とともに減少していくため、10代のうちに運動をしてしっかり食べることで、一生分の骨量を蓄えることが期待できます。この時期に運動しないことでお腹が空かない、お腹が空かないから食事をしない、その結果エネルギー不足で痩せている状態(エネルギー低回転型)となり、将来的に骨粗鬆症や糖尿病等を引き起こす要因ともいわれています。さらに、様々なライフステージにおける女性が、日常生活の中で気軽にスポーツを楽しむことができるように、健康と運動に関する情報をメルマガやSNSで配信するなど、女性のスポーツ参加を応援しています。

誰もがスポーツに参加しやすい環境づくり:イメージ1

スポーツ施設を利用しやすくすることも重要です。スポーツ庁では、年齢、性別、能力等に関係なく施設を利用しやすくするユニバーサルデザイン化を推進するため、ハード・ソフト両面において配慮すべき事項や取り組み事例など実践的な手法や考え方をガイドブックに取りまとめています(ガイドブックは以下URLに令和5年3月13日掲載予定 https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop02/list/1380329_00010.htm)。そのほか、男性が利用できるおむつの交換台や授乳室の設置など、誰もが使いやすいスポーツ施設となるよう様々な助成も行っています。

誰もがスポーツに参加しやすい環境づくり:イメージ2

女性の健康に関する正しい知識の普及・啓発

学校教育においては、「生きる力」を育むことを大きな柱として、保健体育科の学習指導要領では、心と体を一体として捉え、生涯にわたる心身の健康の保持増進や豊かなスポーツライフの実現を重視する内容となっています。女性特有の健康課題についてもパンフレットやリーフレットを作成し、授業での活用や教員への理解促進に繋げています。

運動部活動に所属する女子生徒に関しては、これまで具体的な取り組みはありませんでした。このためスポーツ庁では、スポーツに取り組む女子生徒の健康課題への対応についても取り組むこととしています。令和4年度に実施した実態調査を踏まえ、生徒、保護者、教員への正しい知識の普及・啓発を進めています。

指導者については、公益財団法人日本スポーツ協会(JSPO)が作成した『女性スポーツ促進に向けたスポーツ指導者ハンドブック(平成30年度作成)』を活用し、指導者講習会等での普及・啓発を図っています。

女性の健康に関する正しい知識の普及・啓発:イメージ

女性アスリートの育成・支援

オリンピック・パラリンピック競技大会等をはじめとする国際大会での活躍を目指す女性アスリートに関しては、これまでの活躍を後押しする形で、平成25年度より調査研究や戦略的な支援に取り組んできました。女性アスリートが最高のコンディションで試合に臨めるよう、婦人科と連携した相談体制の構築や妊娠・出産後に競技復帰を目指す女性アスリートへの医・科学サポートの実施など、女性アスリートが健康に競技を継続できる環境整備を図っています。

令和4年度より、アスリートが居住地域に関わらず医科学サポートを受けられる体制整備の一環として、女性アスリートに特化したモデル事業に取り組むとともに、誰もが女性アスリート支援に関する情報にアクセスできるよう、オンライン・プラットフォームの構築に取り組んでいます。

アスリートのキャリア支援

引退後のアスリートへの支援としては、2017年2月から産官学が一体となってアスリートのキャリア形成を支援する「スポーツキャリアサポートコンソーシアム」を運営しています。コンソーシアムでは、キャリア移行期を迎えたアスリートに対して、必要な情報提供等の支援を行う「アスリートキャリアコーディネーター」という人材を育成しており、昨年11月には、オンライン上でアスリートや指導者等からの相談を受け付ける相談窓口も開設しました(https://acc.sportcareer.jp/scsc/home)。こうした支援を、女性のトップアスリートにも活用していただいています。

アスリートのキャリア支援:イメージ

魅力的なスポーツ観戦の場所づくり

「みる」スポーツの価値や潜在能力を最大化させるため、スタジアムやアリーナが多様な世代が集う交流拠点となるよう国内外の先進事例をまとめた「スタジアム・アリーナ改革ガイドブック」の公表や地域の核となるスタジアム・アリーナのモデル拠点の選定などの取り組みを進めています。

デジタル技術や団体の連携による映像配信

一般社団法人大学スポーツ協会(UNIVAS)では、大学日本一を決める大会(準ずる大会)等の試合映像をアプリ「UNIVAS Plus」で配信するなど、「みる」スポーツの参画拡大を図っています。また、一般社団法人日本トップリーグ連携機構では、ホッケーやフットサルなどの女子スポーツの映像を無料で配信する取り組みも行っています。

【参考記事】

アスリートへの写真・動画による性的ハラスメント防止の取り組み

アスリートの盗撮や、性的目的の写真・動画の悪用、悪質なSNS投稿の問題については、令和2年11月13日、国内7つのスポーツ統括団体(※)が共同で被害撲滅に向けた声明を発表しました。公益財団法人日本オリンピック委員会では、特設サイトを設け、アスリートを傷つける性的目的のSNS投稿やWEB掲載について通報することのできる報告フォームを設置しています。また、スポーツ庁では、令和4年7月26日に各競技団体宛に事務連絡を発出し、性的ハラスメント防止に向けた競技団体の取り組み事例等の周知を行っています。引き続き、関係機関とも連携しながら、アスリートが安心して競技できる環境づくりに取り組んでいきます。

(※)独立行政法人日本スポーツ振興センター、公益財団法人日本スポーツ協会、公益財団法人日本オリンピック委員会、公益財団法人日本パラスポーツ協会、一般社団法人大学スポーツ協会、公益財団法人全国高等学校体育連盟、公益財団法人日本中学校体育連盟

アスリートへの写真・動画による性的ハラスメント防止の取り組み:イメージ

女性リーダーの育成に向けて

ハイパフォーマンスレベルで活躍する女性コーチを増やすため、アスリート出身の女性コーチの育成に取り組んでいます。様々な障壁によってコーチの道を諦めることがないよう、プログラムには育児サポートやメンタリング等の支援が組み込まれています。

またスポーツ団体におけるガバナンス強化の観点からも、女性理事の割合を増やすための取り組みを行っており、外部からの女性役員の採用に積極的に取り組むスポーツ団体と女性役員候補者とのマッチング支援や、女性役員の比率向上に向けた計画策定・研修実施等の支援を行っています。

国際協力枠組みと対外発信

政府間の協力枠組みとしては、日本とASEANの間で「日ASEAN女性スポーツ会合」を開催するなど、ASEAN地域における女性スポーツの発展とスポーツを通じたジェンダー平等社会の実現にむけた協力を進めています。

【参考記事】

これらの取り組みについて、第8回世界女性スポーツ会議で発表するなど、日本の取り組みについて積極的に対外発信を行っています。

女性スポーツのさらなる発展を目指して

ここまで女性スポーツの現状と課題、国内の施策について3つの視点から紹介してきました。女性が生涯を通じてスポーツを楽しめる環境を実現するためには、サービスの充実や環境整備だけでなく、女性一人ひとりがスポーツを通じて喜びや楽しみを分かち合うことが重要です。

まずは、スポーツをして、みて、ささえてみませんか?

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